DRM に関する覚え書き

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ちょっとわけあって DRM (Digital Rights Management)について調べ物。 ついでに DRM について思ったことを覚え書きとして残しておく。 なにせ私はマルチメディア(古語)関連にてんで疎いので, DRM そのものは理解できても, それが私たちにどう作用するかについては実はよく分かってなかったりする。 というわけで, これから書くことはまるっきり頓珍漢な内容かもしれないがご容赦を。

巷にある DRM 製品でメジャーどころは以下の3つだろうか。

この中では FairPlay のみ位置付けが異なる。 他の2つは DRM の開発および運用プラットフォームを提供するものだが, FairPlay は iTS と完全にリンクしている。 例えば(現実にはあまり考えられないが) FairPlay を使ってコンテンツを流通させたいと思っても, 流通経路が iTS で固定されているために, コンテンツホルダー自身も制約を受けることになる。

「すでにミュージシャン自身が制作・流通・決済が個人で可能なわけですよね。そういう状況の中で、一つの大手が沢山の楽曲を収集して陳列台に並べるということにどれだけ意味があるのか、ということなんですけども。反対に自分の楽曲を常に自分の管理下に置いて、どのようにお客さんが来ているのかを自分でモニターしながら活動を続けていくことと、最終的にどっちがアーティストにとって利益が大きいのか」

逆に言うと, もし FairPlay に何かあってもその影響範囲はあくまでも iTS 周辺に限られる。 (Helix DRM や Windows Media DRM では, そのプラットフォームに乗っている全てのサービスが影響を受ける)

DRM というのは, ぶっちゃけて言うなら, コンテンツの「流通」を管理するものだ。 そう考えると “Digital Rights Management” という名前は正しいとは言えないんじゃないか (FSF は “Digital Restrictions Management” と呼んでるらしい)。 これが本当に権利を管理するものだというなら上記の DRM 製品には明らかな欠陥がある。

「この素晴らしき『認定つきミュージックサービス』の新世界では、法律を守っている音楽ファンは、しばしば自分たちが古い CD の世界 (あるいは少なくともレコード会社が DRM をつかって CD をも 無力化しはじめる前の世界) で払っていた金額よりも少ないものしか受けとっていません」

DRM は既存の本やカセットや CD/DVD といったコンテナの代替物として機能する。 DRM というコンテナが登場したことでネット上に既存の物流システムをエミュレートする環境が整った。 しかし, このエミュレーション環境は流通の端から端まで(パッケージングからコンテンツ再生まで)ひとつのサービスが牛耳っている。 コンテンツホルダーはサービスを選んだ時点でコンテナを選べない。 ユーザもサービスを選んだ時点でコンテナが固定されるため, コンテンツを再生するプレイヤーを(場合によってはプレイヤーを稼動させるプラットフォームも)選べない。 またコンテンツ自身も入れられたコンテナによってその末路が決定してしまう。 大抵は何回か再生された後(譲渡も再利用もできないから)メモリまたはハードディスクの中で死蔵される。 同じコンテンツでも入れられるコンテナが違えば別の製品であり, 別の製品であれば別のプレイヤーでなければ再生できない。 そしてプレイヤーの消失とともにそのコンテナはただの屑データになる。

「昔はカセットでコピーして友達同士でやりとりしていたし、オンエアされたものをエアチェックしてコピーしていたわけですよね。それがデジタルコンテンツになったところで、何を騒ぐんだということですよ。 (中略) プロテクトや補償金の話はビジネスの問題であって、コピーするしないは倫理の問題じゃないですか。彼らは倫理を大儀にして、ビジネスしているだけなんですよ」

既存の「出版社」というのは既存の物流システムしか想像できない。 だからそれをエミュレートできる DRM に飛びつく。 しかし DRM を選択したことによってこれまで「出版社」が担っていたかなりの部分を iTS などの新しいプレイヤーにぶったくられてしまった。 それでいてもう一方では「理想はDRMフリー、スティーブ・ジョブズ氏がDRM問題にコメント」なんてなことを言っている。 それなら

「iTunesには、作品をクリエイティブ・コモンズで提供しているアーティストもいる。Colin Mutchlerもその一人だ。作品が初めてiTunes入りしたとき、MutchlerはDRMをオフにするよう求めたが、アップルに拒否されている」

ってな話はどうなんだってことだよな。

閑話休題。

「DRMフリーで困るのは「定額制」では?」という意見がある。 私の印象だけど, DRM のような仕組みが多少なりとも正当化されるのは定額制によるストリーミング・サービスじゃないかと思う。 ストリーミング・サービスは基本的には消費によってコンテンツが消尽してしまうのでコピーとか考える必要がない。 どちらかというと TV・ラジオや映画館といったメディアに近いからだ。 定額制サービスへの影響については Windows Media DRM を破ったクラッカーのインタビュー記事も参考になる。

「FairUse4WMはコンテンツ配信サービスにとって良いものだと考えている。たとえコンテンツに対して有効なプロテクトが存在しなくても、世界がひっくり返るわけではないと実証しているからだ。定額制サービスへの影響は疑わしいと思う。(FairUse4WMがなくても) アナログホールを利用するプログラムはすでに広く知られている。会費制定額サービスの価値は常に新しい曲にアクセスできることで、プロテクトとは無関係だ」

その他参考になるかもしれない記事。

『ユビキタス時代の著作権管理技術』くらいは読んどくべきかな。