Next Generation Network

no extension

近年は通信関連の仕事をやってないし NGN についても全く知らないし興味もなかったので, この辺から軽く予備学習。 ってかこの報告書, 誤字が目立つんだけど, ちゃんと校正してる?

ざっと目を通しただけの印象で書いてるので話が厳密でないのはご容赦を。 あっ, いつもそうか。

NGN って 3GPP の延長線上にあるんだねぇ。 国際的な構図とかも似ている。 3GPP のときは NTT に Celler 方式から CDMA 方式に切り替えたい積極的な理由があった (日本の都市部のように極端に人=移動機が密集している場所では Celler 方式は不利。 でもそこで au (当時の IDO/セルラー)のように既にあるものを使うんじゃなく自前でそろえなきゃ気がすまないところが NTT だけど)。 だが今回の NGN は明らかに政治的なものに見える。 まぁ u-Japan 政策に組み込まれてるんだから当然なんだけど。

ざっと見た感じで NGN への懸念は以下の通り。

  • ネットワークのあらゆるレイヤにまたがっている点
  • ネットワークの中立性
  • セキュリティ

例えば DRM については

「ITU はDRM の仕様を策定していないが、トリプルプレイと深い関連があるIPTV に関する標準が策定されることによって、結果的にDRM に関する標準を策定しなければならなくなるだろう」

とある(トリプルプレイというのは電話・放送・データ通信といったサービスをひとつの回線で提供すること)。 NGN は単なるインフラではなく上位のサービスまでカバーするものであり, 通信事業者も NGN がそうなることを期待している。 そうなれば当然 DRM のようなコンテンツ制御(今の DRM はコンテンツ制御であって権利管理などではない)やトラフィック制御も組み込まざるを得なくなる。 DRM は基本的に利用者側のネットワーク端末に組み込むものであり, それはつまり NGN を選択することによって支配(コントロール)から逃れられなくなることを意味する。

そして更に問題になるのがネットワークの中立性だ。 たとえば

「料金を支払った人に対して、あるいは、緊急事態が発生した場合に優先してサービスを提供する技術を持っている。」

とある。 つまり, あるユーザに対してあるトラフィックを許容するかどうかを決める権限は, ユーザにもサービスベンダにもなく, 真ん中の通信事業者にあるというわけだ。 この「ネットワークの中立性」の問題を通信事業者は「ネットワーク資源の再配分」の問題にすりかえている。 いわゆる「ただ乗り論」ってやつだ。 それでもアメリカ辺りでは「ネットワークの中立性」がちゃんと議論としてあがっているからまだいいが, (報告書にも書かれているが)日本でこの手の話が議論としてあがってくることはほとんどない。 NGN が「ネットワークの中立性」よりも「ネットワーク資源の再配分」を優先するのであれば, かなりヤバい状況であると言える。

NGN のセキュリティに関しては(IPA/ISEC の報告ということで?)かなり具体的な内容になっている。 NGN のセキュリティは X.805 をベースにしているようだが, この勧告は End to End の通信を前提にしている。 しかし, 先ほど述べたように, NGN では中間に立つ通信事業者による干渉を無視できない。 前提が違うのである。 また(個々の技術要素の脆弱性を評価するというのならともかく) NGN 全体のセキュリティを考えるのであれば, その中にいるプレイヤー(ユーザやサービス・ベンダや間に入る通信事業者)も含めて考える必要があり, 各プレイヤーのリスク受容(“Beyond Fear” 風に言えばトレードオフ)を巡って恣意的な判断が混入することを避けられない。 しかし報告書を見る限り, そこまでちゃんと考えているようにはとても見えない。 例えば「モバイル IP」にしたって IPv4 ベースと IPv6 ベースではリスク/ベネフィットのバランスが異なる。 IPv6 ベースのモバイル IP は現行のサブスクライバ ID なんか目じゃないほどのトレーサビリティを実現できてしまう恐れがある。これはサービスプロバイダや通信事業者にとってはベネフィットかもしれないが, ユーザにとってはリスクになる。

まぁ一言で言うなら NGN は風呂敷を広げすぎてる。 サブシステムを抱え込みすぎていることで必要以上に複雑になっているし柔軟性に欠けるシステムになってしまっている。 日本のキャリアは i-mode が見せてくれた夢を NGN でもう一度とか思ってるのかもしれないが, インターネットから見れば i-mode が鎖国的状況を作り出しており, すっかり「置いてけぼり」を食らっていることに気付いていない。

とまぁ, ざっとこんな感じ。 的外れなことを書いてるかもしれないが, 覚え書きということで。