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残念な「はてな」

なんだか今流行らしいので, 私も例のインタビュー記事の感想めいたことを書いてみる。

最初に言っておくと, 私は梅田望夫さんのファンで, 評論家ではなく経営者としての視点による言説が好きである (もちろん言説のすべてを諸手を挙げて礼賛するわけではないが)。 一応彼の著書も(全てではないが)いくつか読んでいる。

ちなみに私は将棋には全く興味がないので, シリコンバレーで将棋がどうたらいう本は買ってもいない。

日本の(というより日本語圏の)ネットと英語圏のネットが異なる展開を見せているというのは当然の成り行きだろう。 以前も似たようなことを書いたが, ネットにおける母語はもはや英語なのである。 日本語は数多ある「現地語」のひとつでしかない。 したがって日本語圏のネットも現地語によって構成されたエスニック文化のひとつに過ぎない, と見なすことができる。 「大変化」の波の最先端に乗っかりたければ日本語圏を出るしかないのだ。 これは日本語を母語とする日本人にはハンデかもしれないけど, もはやそうなってしまったのだからグダグダ言ってもはじまらない。

「日本でのネットはメタかネタ」 であるなら梅田望夫さんの憂鬱は分からないではない。 個人的な印象で言うと, 日本(日本語圏)のネットのメタでネタなコミュニケーションは, ある意味でマス・コミュニケーションの典型のひとつなんじゃないだろうか。 双方向でフラットなマス・コミュニケーションがもしあるとするならそうなるだろう, というのを体現しているように思える(そしてマスであるが故にそれは匿名的な振る舞いを示す)。 それは見方によっては「残念」なのかも知れないけど, 見方によってはネットの未来の方向のひとつを指し示すものでもある。 それにネット上のコミュニケーションは複数のモードが折り重なっているものだ。 日本語圏のネットはメタでネタというだけではない。 逆に英語圏であってもメタでネタなコミュニケーションがないとは言えない。 景色が異なるからといって本当に日本(日本語圏)の Web が「残念」なのかどうかは断言できないのではないだろうか)

個人的に「なんだかなぁ」という気分にさせられるのは後半の記事だ。

梅田望夫さんは 『ウェブ進化論』 において「大変化」を説かれた。 そしてこの著書とその後続く著書において, 「大変化」を生き延びるにはその最先端に立つべきだと繰り返し書かれている。 だからこそ彼が「はてな」の非常勤取締役になられたときには「はてな」に期待が集まったし, その後の梅田望夫さん自身の言動も「はてな」の経営サイドの立場としてのものを期待されていた筈である。 そうして, 社長の近藤淳也さんはアメリカに渡り, 何も成果をあげることなく帰国し, さらに京都に撤退した。

「はてな」は2001年創業の会社だ。 ネットの変化の速さを尺度にすれば, もう「若い」とは言えない年齢だ。 長く経営をやっていれば失敗することも多々あるだろう。 それはタイミングの問題だったかもしれないし, リソースの問題だったかもしれない。 それでも, 失敗は失敗として認め, 正しい分析を行い未来へ生かすのが経営というものだろう。

しかし, 後半の記事を読む限り「はてな」の未来が全く見えてこない。 私ははてな市民ではないので外から眺めるだけだが(一応アカウントは持っている。 hatena.com のね), 現時点での私の「はてな」の評価は「L10N はできても I18N はできなかった会社」だ。 それは渡米の失敗で明確にあらわれている。 現在「はてな」のサービスに魅力的なものは何ひとつない。 スピード感もない。 強いて言えば「うごメモ」はちょっと面白かったけど, 結局日本ローカルのサービスだし, サービスインから今まで何の進展もない。 (iPhone 用のうごメモ・アプリケーションくらい作ったってバチは当たらない筈だ)

「はてな」は「大変化」の最先端に立てなかったのである。 この期に及んで, はたして「はてな」に梅田望夫という人材は必要なのだろうか。 いや, むしろ, 梅田望夫さんが「はてな」を見限ってもおかしくない。 そういう緊張関係が全く見られず, きっとこれからも変わらず, ただ思いついただけのローカル・サービスを泡沫のように作っては壊すだけのように読み取れる。

本当に「はてな」は残念な会社だ。 それがインタビュー記事を読んだ最終的な感想である。

(6/9 追記)

「はてな」に関してはその後, 実はこっそり英語画面を用意してたりとか, DSi の「うごメモ」も海外版があるらしい(受け皿が「はてな」とは限らないけど)とかいう話もチラホラ聞いているので, 言うほど「残念」ではないかもしれない。 もしそうならゴメンなさい。

でも私は外側から眺めている人なので, 途中の過程には興味がない。 成果だよ, 成果。 2年前にわざわざ取ったアカウントはやっぱ無駄だった, ってなことにならないよう, (期待はしないけど)ささやかな願望は表明しておこう。