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『食のリスク学』を読む

中西準子さんの雑感を見てソッコーで買った。 読む前のイメージとしては 以前の著書の 『環境リスク学』 に近い感じかなぁ, と勝手に想像していたが, 実際にはそれよりもう少し「読み物」的な感じで, あっという間に読めてしまった。 あとがきでも

「この本を通して、 読者のみなさまが、 リスクの概念を身に付けていただけると嬉しいです。 リスクの数値を算定することは専門家でないとできないかもしれません。 しかし、 リスクを使う見方を覚えることは、 それほど難しくありません。 それは「慣れ」です。 考え方の「慣れ」です。 是非、 この本を読んで、 「慣れ」て欲しいです。」 (p.250)

とあるとおり, 数字はあまり出てこない。 でも物事をリスクとしてみる見方は十分学べると思う。

物事をリスクとしてみるようになると, 色々と見方が変わってくる。

まず物事はお互いに関連して動いていることが分かる。 リスクの世界には「リスクトレードオフ」という概念がある。 あるリスクを下げようとすると別のリスクが大きくなってしまう。 よってリスクを下げることを考える際は, リスクトレードオフを考慮に入れ, 系(システム)全体でリスクが最小になるように調整されなければならない。

またリスクは往々にしてゼロにできない。 もの凄く頑張ればもの凄く小さくできるかもしれないけどゼロにはできない。 リスク(すなわち安全)について考えるってことは, たいていの場合, リスクをどこまで許容するかという話になる。

個人的には 『食のリスク学』 の1章のリスクとお金の話が面白かったが, 特に印象的だったのは以下の部分。

「お金があればリスクを回避できます。 つまり、 お金がかかることそのものがリスクなのです。」 (p.40)
「リスクを勉強してきた者として、 いつも考えるのは、 お金は他のリスクであがなわれた富だということです。」 (p.43)

企業経営などは(もの凄い大雑把だが)「お金」を通じて富の再配分をする。 一方, リスク管理というのは「お金」を通じてリスクの再配分を行っている, と考えることができるかもしれない。 たとえば, 二酸化炭素の削減問題など今や世界規模でのビッグビジネスになりそうな感じだが, その中でお金がどのようにまわっているか(正しくリスクの再配分が行われているか)といったことをチェックすることが重要だろう。 理念や理想だけでは世の中は動かない。

『食のリスク学』 は例示が豊富でとても読みやすいのだが, やっぱりちょっと食い足りないって方は 『環境リスク学』 も読むといいかもしれない。