ヒマワリは放射性物質の除去にはあまり役に立たないらしい

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しばらくネットから遠ざかっていたので,ちょっと古い話になるのだが,ご容赦。

ヒマワリが放射性物質を吸収してくれるという話はいつどこから始まったのだろうか。 私もあまり深く考えず「ふ~ん,そうなん?」と思っていたが,農林水産省などが実際に調査したらしい。 例によって SciencePortal から。

「福島第一原子力発電所事故で放出され、農地に蓄積した放射性セシウムを除去するには表土を削り取る方法が効果的である一方、ヒマワリによる吸収の効果は期待できないことが、農林水産省、総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省が公的研究機関、大学、企業を動員して福島県内で行った技術研究、試験の結果明らかになった。」 (ヒマワリに放射性セシウムの吸収効果期待できず

表土を削りとる方法はチェルノブイリ事故でも行われた方法である。

「農業機械などで表土を4センチ削り取る方法により、土壌中の放射性セシウムのうち75%が除去できることが分かった。 マグネシウム系固化剤で表面土壌を固化した後では、表面から3センチ削るだけで82%の放射性セシウムを除去できる。 これらの方法の問題は、10アール(1,000平方メートル)当たりそれぞれ40立方メートル(トン)、30立方メートルもの廃棄土壌が出ること。 表層土壌をかくはんし、濁水を排水した後に水と土壌を分離して土壌だけを取り除く試験も行われた。 この方法によると廃棄土壌は10アール当たり1.2-1.5立方メートルで済み、放射性セシウムも30-70%除去できることが分かった。
(中略)
いずれの方法をとるにしても大きな問題になるのが必至なのは、除去した土壌の処理。 技術研究、試験の結果、運搬可能なコンクリート製容器に土壌を入れて仮置きする方法が、放射線遮蔽(しゃへい)効果がある、とされた。」 (ヒマワリに放射性セシウムの吸収効果期待できず

という具合で,かなりいけそうな感じである。

ヒマワリに関しては

「一方、土壌中の放射性セシウムを吸収すると期待されたヒマワリは、作付け時の土壌中に含まれる放射性セシウムの2,000分の1しか除去できなかった。 ヒマワリ以外に放射性セシウムを除去できるとみられる植物は見当たらないことから、植物による放射性セシウム除去法は使用できる段階にない、と農林水産省は評価している。」 (ヒマワリに放射性セシウムの吸収効果期待できず

ということで期待薄なようだ。

放射性物質の除去は喫緊の問題なので早く評価を下して実行に移してもらいたいところだが,既に巷に流布されている「ヒマワリが放射性物質を吸収してくれる」という話が妙にねじれた形で広まらないか不安である。 どういうカラクリなのか知らないが,日本では缶ジュースのプルタブやペットボトルのキャップが何かに役立つとかで山ほど集め回ってる人達がいる(姪の小学校でも集めてるらしい)。 傍目にはどう考えても合理的な活動ではないのだが,「善意の運動」ってやつは一度回り始めると止まらなくなるようだ。 それと同じでヒマワリも妙な形で祀り上げられないことを祈る。