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MIKU という「場(ウェブ)」

めったにテレビを見ない私だが(たまには見るよ,ワンセグで),この CM は1度だけ見たことがあった。

改めて YouTube で見るとホントに凄いビデオですな。なんというかジワジワくる,特に目頭あたりに(笑) で,この CF について中の人にインタビューした記事があるのだが,こちらも興味深いので併せて読むことをお勧めする。

実は,初音ミクという VOCALOID が登場した当時,私はこれが引き起こすのは「実演」の無意味化だと思っていた。「著作隣接権」なる奇天烈な制度の中で特に「実演家の権利」を(いい意味で)ぶち壊しにするような気がしたのだ。しかし4年経って改めてこの CM や “MIKUNOPOLIS in LOS ANGELS” なんかを見ると,そんなのはごく瑣末な現象でしかないとようやく理解してきた。

確かに「少なくともネットの世界では、世界の歌姫となった初音ミク」かもしれないが,それ以上のものとして(特に今年は)「ネットの歌姫」が「リアル」に接続してきたことに意味があるような気がする。たとえば,5月に公開された米国トヨタの CM もかなり衝撃的だった。

初音ミクをはじめとする VOCALOID のシリーズはクリエイタやそれにコミットしようとするユーザ達との間で膨大な「網(web)」を構成している。ある意味,その網や網の形で形成される「場(field)」のようなものが彼女等の本質のように思われる。それが「リアル」に接続してくるのである。

文化とは(そこがネットであろうがリアルであろうが)私たちの日常の活動そのものであり,文化の発展とは即ち「文化の混血(hybrid)化」を指す。 VOCALOID とは,「声」が「唄」と出会い「姿」と「動き」と大勢のオーディエンスを得ていくプロセスであり,それは「文化の発展」の縮図だと思う。そして「ネットの歌姫」が「リアル」に接続するその現象自体が「文化の混血化」なのである。

それを目の当たりにして感動しないわけがない。

VOCALOID が文化の発展またはその象徴を指すものであるとしたら,「文化の発展に寄与することを目的とする」(第1条)著作権法は VOCALOID を見て何を思えばいいのだろう。著作権者に過度のコントロールを与え,あまつさえ著作物に妙な不可侵性でもあるかのような勘違いを引き起こす現行著作権法は本当に「文化の発展に寄与」しているのか。なんてなことを “MIKUNOPOLIS in LOS ANGELS” の DVD を見ながら頭の隅で考えてしまうわけですよ。

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How to Fix Copyright
William Patry
Oxford Univ Pr (T) 2012-01-04

by G-Tools , 2011/12/28