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tag:Baldanders.info,2012-11-29:/tags
2012-11-29T09:00:00+00:00
バルトアンデルスは連続的な怪物,時間の怪物である。(ホルヘ・ルイス・ボルヘス 『幻獣辞典』より)
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『リスクと向き合う』を読む
tag:Baldanders.info,2012-11-29:/blog/000614/
2012-11-29T09:00:00+00:00
2012-11-29T09:00:00+00:00
『BEソーシャル!』を読んでいる途中だったが,中西準子さんが『リスクと向き合う』という本を出されたということで,さっそくそちらを購入して読んだ。
Spiegel
/profile/
<p>
『BEソーシャル!』を読んでいる途中だったが,<a href="http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak616_620.html#zakkan616">中西準子さんが『リスクと向き合う』という本を出された</a>ということで,さっそくそちらを購入して読んだ。
</p><p>
『リスクと向き合う』は2部構成になっていて,1部は「福島原発事故に直面して」で,2部は読売新聞で連載されていた「時代の証言者」がベースになっているそうだ
(私は新聞を読まないので知らないが)。
2部は自叙伝のような形になっているので感想文はパスさせていただく。
いや面白かったんだけど,自叙伝とか伝記とかちょっと苦手なのよ。
子供の頃はよく読んでたけど。
2部は『<a href="https://baldanders.info/blog/000476/">食のリスク学</a>』を併せて読むとより面白いかもしれない。
</p><p>
手元に吉川肇子さんの『リスクとつきあう』という本がある。
2000年に出版された本だ。
この中で「危険と感じられる活動や科学技術」という表がある(p.77)。
これは自動車や飛行機,喫煙といった様々な活動や科学技術を30項目挙げ,一般の男女と専門家にそれぞれ「危険」と思う順番をランキングしてもらったものだ。
面白いことに原子力は一般の男女とも最も危険なものとして挙げているが,専門家の場合は20位となっている(1位は自動車)。
これは一般の人と専門家ではリスク認知が異なるためと説明されている。
リスクは被害の大きさと生起確率の積として表される。
原発は事故が起こった時の被害は大きいが「めったに起こらないこと」として専門家の間では認識されてきた。
</p><p>
しかし,今回の福島原発事故では,そうした「前提」に疑問符が投げかけられる。
なにより実際の事故を目の当たりにした人たちは,その恐怖を刷り込まれる。
<a href="https://baldanders.info/blog/000522/">私は反原発派でも脱原発派でもない</a>が,日本で原発が全面的に再稼働するのは難しいと考える。
経済界や政界の中には「原発は必要」と考える人も多いかもしれないが,原発に対する「社会的受容」はこれまでになく下がっている。
しかも政府・行政や電力会社は原発事故に関する「リスク・コミュニケーション」に明らかに失敗している。
このしわ寄せは私たちの払う税金や電気料金で贖うことになるだろう(実際,各電力会社は次々と値上げを申請しているようだし)。
つまりこれが「リスク・トレードオフ」である。
</p><p>
「リスク・トレードオフ」は,リスクがぶつかり合う時にリスク同士をどのように調整していくかと言う知恵である。
放射線リスクは具体的には発がんリスクだが,例えば「◯◯シーベルト以下なら安全」という基準値がない。
</p><blockquote>
「放射線には、「この値以下なら、絶対大丈夫」という値がないので、どのレベルなら許容できるかをめぐって混乱が続いています。
もともとこれならリスクがゼロだ、という値がないものについては、どうやって一応の許容レベルを決めるのか、というのが非常に大きな問題です。
国民の叡智が問われる問題です。」
(『リスクと向き合う』 p.38)
</blockquote><blockquote>
「リスクはゼロでなければダメだと言ってしまったら、世の中は動かないので、どのくらいならリスクを受け入れられるのか、という議論を真っ正面からしなければこういう問題は扱えないのです。
日本人はそれをやらない。
どのくらいなら受け入れますということを言わないで、みんなが勝手に「安全だ」「危険だ」などと言っているのです。」
(『リスクと向き合う』 p.42)
</blockquote><p>
じゃあ例えば年間1ミリシーベルト以下という「安全基準」はどこから来てるのかというと,多分に政治的な決定だったりする。
</p><blockquote>
「自然起源の放射線強度は、ラドンの影響を除くと年一ミリシーベルト程度です。
さらに、自然界の放射線が場所によってどのくらい違うかをいろいろ調査した結果、場所による変動も年一ミリシーベルトぐらいでした。
場所により高い低いはあるが、そのことは健康に影響を与えていない。
放射線濃度の高低によって土地が安いとか高いとか、病気が多いとか、そういうこともない。
これなら受け入れられるでしょうね、ということから年一ミリシーベルトを一応の基準として提案し、多くの国や国際機関がそれを採用しているのです。
だからこれは安全基準でも何でもないのです。
ただ社会的にそのくらいを基準にして決めましょうねという取り決めでしかないのです。」
(『リスクと向き合う』 p.34-35)
</blockquote><p>
福島県では除染事業が精力的に行われ相当なお金がつぎ込まれているが,実際にはそれほど効果はないということも分かってきた。
国は除染(3年)後の空間線量率を(上に書いた)1ミリシーベルト/年を目標にしているが,期間的にも資金的にもとうてい無理な目標である。
にも関わらずこの「1ミリシーベルト/年」だけが独り歩きしている。
ここでも国のリスク・コミュニケーションの失敗がある。
</p><p>
避難者にとっては「移住のリスク」は大きな問題だ。
</p><blockquote>
「原発に賛成する人たちは、「人が死んでいないじゃないか」ということをよく言います。
確かに、福島では事故による直接の死者はいません。
チェルノブイリだって作業員や消防士が亡くなり、子供の甲状腺がんは増えているけど、住民の多くが死ぬという事故ではありませんでした。
ただ、原発事故の場合には、広大な土地が失われたということを見ないと、人間がどのくらい死んだのか、ということだけでは被害は測れません。
土地が失われた、あるいは住めないということは、深刻です。」
(『リスクと向き合う』 p.23)
</blockquote><p>
国が「1ミリシーベルト/年」をゴリ押しすれば(現実とのギャップのために)避難者は移住か帰還かの判断をいつまでも先送りされることになる。
しかもその「先送り」自体がリスクであり,避難者はそのリスクを強制されることになる。
</p><p>
世の中には常に複数のリスクがせめぎ合っている。
一部のリスクは(上に挙げた除染事業のように)お金で贖うこともできるかもしれないが,それは単に(お金を媒介して)リスクを他に移転してるだけだったりする。
リスクは全体の系を見て最小になるよう調整されなければならない。
それが「リスク・マネジメント」であり,そのための手段のひとつが「リスク・トレードオフ」なのである。
原発事故とその後の放射線の問題はこうした知恵を用いて解決すべき問題なのだということを『リスクと向き合う』を通じて理解していきたいと思う。
</p>
<div class="hreview"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4120044505/baldandersinf-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51BhoNAZDgL._SL160_.jpg" alt="photo" class="photo"/></a><dl><dt class="fn"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4120044505/baldandersinf-22/">リスクと向きあう 福島原発事故以後</a></dt><dd>中西 準子 河野 博子 </dd><dd>中央公論新社 2012-11-22</dd><dd>評価<abbr class="rating" title="5"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/G/01/detail/stars-5-0.gif" alt=""/></abbr> </dd></dl><p class="similar"><a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4255006768/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4255006768.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334037062/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4334037062.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4584123586/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4584123586.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="放射線医が語る被ばくと発がんの真実 (ベスト新書)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198634866/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4198634866.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="国会事故調 報告書"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062177617/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4062177617.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="証言 細野豪志 「原発危機500日」の真実に鳥越俊太郎が迫る"/></a> </p><p class="gtools">by <a href="http://www.goodpic.com/mt/aws/index.html">G-Tools</a> , <abbr class="dtreviewed" title="2012/11/29">2012/11/29</abbr></p></div>
<div class="hreview"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4641280304/baldandersinf-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/519S1SM2S4L._SL160_.jpg" alt="photo" class="photo"/></a><dl><dt class="fn"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4641280304/baldandersinf-22/">リスクとつきあう―危険な時代のコミュニケーション (有斐閣選書)</a></dt><dd>吉川 肇子 </dd><dd>有斐閣 2000-03</dd><dd>評価<abbr class="rating" title="5"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/G/01/detail/stars-5-0.gif" alt=""/></abbr> </dd></dl><p class="similar"><a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4535584095/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4535584095.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="環境リスク学―不安の海の羅針盤"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480064494/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4480064494.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="安全。でも、安心できない…―信頼をめぐる心理学 (ちくま新書)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140910631/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4140910631.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="リスクのモノサシ―安全・安心生活はありうるか (NHKブックス)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4885553970/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4885553970.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="誤解だらけの放射能ニュース (エネルギーフォーラム新書)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4779302226/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4779302226.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="リスク・コミュニケーションとメディア―社会調査論的アプローチ"/></a> </p><p class="gtools">by <a href="http://www.goodpic.com/mt/aws/index.html">G-Tools</a> , <abbr class="dtreviewed" title="2012/11/29">2012/11/29</abbr></p></div>
<div class="hreview"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4255006768/baldandersinf-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41guTWnEfGL._SL160_.jpg" alt="photo" class="photo"/></a><dl><dt class="fn"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4255006768/baldandersinf-22/">やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識</a></dt><dd>田崎 晴明 </dd><dd>朝日出版社 2012-09-27</dd></dl><p class="similar"><a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4839943559/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4839943559.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="放射線測定のウソ (マイナビ新書)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4772610545/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4772610545.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334037062/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4334037062.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000285300/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4000285300.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="低線量放射線被曝――チェルノブイリから福島へ (叢書 震災と社会)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4621085972/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4621085972.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="放射線を科学的に理解する 基礎からわかる東大教養の講義"/></a> </p><p class="gtools">by <a href="http://www.goodpic.com/mt/aws/index.html">G-Tools</a> , <abbr class="dtreviewed" title="2012/11/29">2012/11/29</abbr></p></div>
日本学術学会は原発に批判的?
tag:Baldanders.info,2011-09-23:/blog/000546/
2011-09-23T09:00:00+00:00
2011-09-23T09:00:00+00:00
SciencePortal の記事が興味深かったので紹介しておく。
Spiegel
/profile/
<p>
昨日の <a href="http://scienceportal.jp/">SciencePortal</a> の記事が興味深かったので紹介しておく。
</p><ul>
<li><a href="http://scienceportal.jp/news/review/1109/1109221.html">2011月9月22日「日本学術会議が『合意した声』を出せるのは」 / SciencePortal</a></li>
</ul><blockquote>
「日本学術会議哲学委員会主催の公開シンポジウム「原発災害をめぐる科学者の社会的責任-科学と科学を超えるもの-」 が18日、都内で開かれた。
パネリストに原子力工学者の姿はない。
原子力発電に批判的な発言が目立った。」
(<a href="http://scienceportal.jp/news/review/1109/1109221.html">「日本学術会議が『合意した声』を出せるのは」</a>より)
</blockquote><p>
日本学術会議については以前,金澤一郎日本学術会議会長談話として「<a href="http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d11.pdf">放射線防護の対策を正しく理解するために</a>」(PDF)という文書が公開されているが,それに対する<a href="http://shimazono.spinavi.net/?p=233">会員からの批判</a>もあるらしい。
シンポジウムでも
</p><blockquote>
「島薗進・東京大学大学院人文社会系研究科教授(日本学術会議会員)をはじめ複数のパネリストは、政府が、避難区域設定や食品中に含まれる放射性物質の暫定基準設定のよりどころとした国際放射線防護委員会(ICRP)の基準自体に疑問を持っているようだ。
政府の食品安全委員会委員でもある唐木英明・元東京大学アイソトープ総合センター長(日本学術会議副会長)が「食品に含まれる放射性物質の暫定基準は国際的に合意されているICRPの基準に基づきさらに安全度を見込んで決めている」という説明に納得していなかった。
確かに平常時と緊急時は違うといっても、年間の被ばく線量として1ミリシーベルト、20ミリシーベルト、100ミリシーベルトなどさまざまな数字が出てくるのは、一般の人間にとってはなおさら理解しにくいところだろう。」
(<a href="http://scienceportal.jp/news/review/1109/1109221.html">「日本学術会議が『合意した声』を出せるのは」</a>より)
</blockquote><p>
という感じで批判的なムードのようだ。
</p><p>
(Tumblr でも書いたのだが,「基準値」ってやつは往々にして<a href="https://baldanders.info/blog/000534/">リスクへの理解</a>を妨げるような気がする。
「基準値」はもともとハザード的な発想である。
でも実際には基準値より上だろうと下だろうと確率的に影響が出る点では変わらないのだ。
リスクにおける「基準値」はリスク評価に対して特定の条件を加えたもので,その条件は政治的な判断にならざるをえない場合が多い。
放射線量の基準値が平時と有事で異なるのはそのためだ。
リスクは系全体で最小となるようにマネジメントされなければならない。
だから「条件」を巡って議論が起きるのは不思議なことではない。
ただ傍で見てて「それって科学なの?」という思いはあるけど。
私たちはその「基準値」がどのような条件のもとで出てきたのか読み取る必要がある。
それが「リテラシー」というやつである)
</p><p>
また,同記事では日本学術会議哲学委員会委員長の野家啓一・東北大学理事が <a href="http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/1bu/letter21-7.pdf">6/8 付の日本学術会議第1部ニューズレター巻頭言</a>(PDF)で述べた内容が引用されている。
引用の引用になって恐縮だがここでも挙げておこう。
</p><blockquote>
「そもそも原子力発電は、放射性廃棄物の処理方法さえ確立されていない不完全な技術である。
しかも、いったん事故が起これば、今回のように大気、土壌、水、食料など人間の生存を支える基盤が汚染され、回復不可能な打撃を受ける。
放射性物質は生態系の循環システムの外部にある異質の要素であり、自然界の同化吸収能力の範囲外にある。
そう考えれば、人類は核エネルギーの技術とは共存できないのではないかとの思いを禁じえない。
また、ウランの確認埋蔵量が約80年と見積もられており、放射性廃棄物の処理や廃炉に莫大(ばくだい)なコストがかかるのであれば、次世代に大きな負債を残す原発依存のエネルギー政策からの脱却は中長期的に見て必須であると思われる」
(<a href="http://scienceportal.jp/news/review/1109/1109221.html">「日本学術会議が『合意した声』を出せるのは」</a>より)
</blockquote><p>
個人的にはこの内容に関しては「???」な部分もあるが,日本の原発がエコサイクルを確立できてないという点には同感だ。
将来を考えるならクローズドサイクル方式で運用すべきだが日本ではそうなっていない(それを目指してるのかもしれないが現実にはできていない)。
それどころか世界の多くではワンスルー方式になっていて,この傾向は数十年続くとみられている。
もしクローズドサイクル方式が現実的に見込めないのであれば,中長期と言わずスッパリ諦める(そして天然ガス等の代替手段に置き換える)のも手だと思う。
</p><p>
というわけで,学者さんの中でも(トンデモな人はスルーしておくとして)色々な考えや主張があるわけで,見ている私たちはそういった議論を単純な「対立」として見るのではなく,より良い方向を見出すためのプロセスとして監視していく必要がある。
つまり「合意」よりも「合意に至るプロセス」が重要なのだ。
だからもっともっと私達に見える形で議論して行って欲しい。
</p><p>
あっ,でも喫緊の問題は早く片付けてね。
</p>
ヒマワリは放射性物質の除去にはあまり役に立たないらしい
tag:Baldanders.info,2011-09-19:/blog/000544/
2011-09-19T09:00:00+00:00
2011-09-19T09:00:00+00:00
ヒマワリが放射性物質を吸収してくれるという話はいつどこから始まったのだろうか。私もあまり深く考えず「ふ~ん,そうなんだぁ」と思っていたが,農林水産省などが実際に調査したらしい。
Spiegel
/profile/
<p>
しばらくネットから遠ざかっていたので,ちょっと古い話になるのだが,ご容赦。
</p><p>
ヒマワリが放射性物質を吸収してくれるという話はいつどこから始まったのだろうか。
私もあまり深く考えず「ふ~ん,そうなん?」と思っていたが,農林水産省などが実際に調査したらしい。
例によって <a href="http://scienceportal.jp/">SciencePortal</a> から。
</p><ul>
<li><a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1109/1109151.html">2011年9月15日「ヒマワリに放射性セシウムの吸収効果期待できず」 / SciencePortal</a></li>
</ul><blockquote>
「福島第一原子力発電所事故で放出され、農地に蓄積した放射性セシウムを除去するには表土を削り取る方法が効果的である一方、ヒマワリによる吸収の効果は期待できないことが、農林水産省、総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省が公的研究機関、大学、企業を動員して福島県内で行った技術研究、試験の結果明らかになった。」
(<a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1109/1109151.html">ヒマワリに放射性セシウムの吸収効果期待できず</a>)
</blockquote><p>
表土を削りとる方法はチェルノブイリ事故でも行われた方法である。
</p><blockquote>
「農業機械などで表土を4センチ削り取る方法により、土壌中の放射性セシウムのうち75%が除去できることが分かった。
マグネシウム系固化剤で表面土壌を固化した後では、表面から3センチ削るだけで82%の放射性セシウムを除去できる。
これらの方法の問題は、10アール(1,000平方メートル)当たりそれぞれ40立方メートル(トン)、30立方メートルもの廃棄土壌が出ること。
表層土壌をかくはんし、濁水を排水した後に水と土壌を分離して土壌だけを取り除く試験も行われた。
この方法によると廃棄土壌は10アール当たり1.2-1.5立方メートルで済み、放射性セシウムも30-70%除去できることが分かった。<br/>
(中略)<br/>
いずれの方法をとるにしても大きな問題になるのが必至なのは、除去した土壌の処理。
技術研究、試験の結果、運搬可能なコンクリート製容器に土壌を入れて仮置きする方法が、放射線遮蔽(しゃへい)効果がある、とされた。」
(<a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1109/1109151.html">ヒマワリに放射性セシウムの吸収効果期待できず</a>)
</blockquote><p>
という具合で,かなりいけそうな感じである。
</p><p>
ヒマワリに関しては
</p><blockquote>
「一方、土壌中の放射性セシウムを吸収すると期待されたヒマワリは、作付け時の土壌中に含まれる放射性セシウムの2,000分の1しか除去できなかった。
ヒマワリ以外に放射性セシウムを除去できるとみられる植物は見当たらないことから、植物による放射性セシウム除去法は使用できる段階にない、と農林水産省は評価している。」
(<a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1109/1109151.html">ヒマワリに放射性セシウムの吸収効果期待できず</a>)
</blockquote><p>
ということで期待薄なようだ。
</p><p>
放射性物質の除去は喫緊の問題なので早く評価を下して実行に移してもらいたいところだが,既に巷に流布されている「ヒマワリが放射性物質を吸収してくれる」という話が妙にねじれた形で広まらないか不安である。
どういうカラクリなのか知らないが,日本では缶ジュースのプルタブやペットボトルのキャップが何かに役立つとかで山ほど集め回ってる人達がいる(姪の小学校でも集めてるらしい)。
傍目にはどう考えても合理的な活動ではないのだが,「善意の運動」ってやつは一度回り始めると止まらなくなるようだ。
それと同じでヒマワリも妙な形で祀り上げられないことを祈る。
</p>
放射線リスクという考え方
tag:Baldanders.info,2011-08-20:/blog/000534/
2011-08-20T09:00:00+00:00
2011-08-20T09:00:00+00:00
中西準子さんの雑感経由で,福井県立大学の岡敏弘教授のページへ。
Spiegel
/profile/
<p>
<a href="http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak556_560.html#zakkan558">中西準子さんの雑感</a>経由で,<a href="http://www.s.fpu.ac.jp/oka/">福井県立大学の岡敏弘教授のページ</a>へ。
</p><ul>
<li><a href="http://gcoe.eis.ynu.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2009/10/jjj1.pdf">放射線リスクへの対処を間違えないために</a>(PDF)</li>
<li><a href="http://www.s.fpu.ac.jp/oka/radiation.htm">放射性ヨウ素の暫定基準値の決め方について</a></li>
<li><a href="http://www.s.fpu.ac.jp/oka/radiationriskbenefit.pdf">放射線リスク回避の簡単なリスク便益分析</a>(PDF)</li>
<li><a href="http://www.s.fpu.ac.jp/oka/beef.htm">牛の出荷制限のリスク便益分析</a></li>
</ul><blockquote>
「この混乱を乗り越えて落ち着いた行動を取り戻すために有効なのがリスク論である。
どうすればいいか。<br/>
まず、放射線はどんなに微量でも健康影響の可能性があるという覚悟を決めることである。
その場合の健康影響は、発がんと遺伝的影響である。
どんな微量でも影響の可能性があるのかどうか、逆に言えば、これ以下なら安全という「閾値」がないのかどうかは、実は科学的には決着の付いていない問題であるが、国際放射線防護委員会(ICRP) は、疫学では決してこの問題に決着は付かないということをはっきり言い、100ミリシーベルト以下の低い被曝については、どんなに少ない被曝量でもがんと遺伝的影響の可能性はあるという前提に立って、その可能性を確率として表現し、さらにその確率が被曝線量に比例すると仮定し、それに基づいて、各国の放射線防護政策をとるように勧告してきた。
日本も基本的にその勧告に従って放射線防護を行っているのだから、一般への説明も、その考え方と合うようにするのがよいと思う。<br/>
どんな微量な被曝でもそれなりの確率でがんが起こるとしたら、防護の考え方は、危険でないレベルを求めるのではなく、どのレベルの危険なら我慢できるかということに基づかなければならない。
これがリスク論による考え方の転換である。
どの程度の危険(=リスク) なら我慢できるかを決めるものは、他の危険(=リスク) との比較と便益や費用との比較以外にはない。」
(「<a href="http://gcoe.eis.ynu.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2009/10/jjj1.pdf">放射線リスクへの対処を間違えないために</a>」より)
</blockquote><p>
この部分が「放射線リスク」の核心である(いや,他のリスクでも基本的な考え方は同じなのだが)。
政治的なレトリックや脅威を煽るだけの発言や意味不明のマッチポンプ広告に惑わさないためにも,ここはしっかり押さえておく必要がある。
続きはリンク先を読むべし。
</p>
<div class="hreview"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000280449/baldandersinf-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/31xVRKOWXQL._SL160_.jpg" alt="photo" class="photo"/></a><dl><dt class="fn"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000280449/baldandersinf-22/">環境経済学 (岩波テキストブックスS)</a></dt><dd>岡 敏弘 </dd><dd>岩波書店 2006-04-18</dd></dl><p class="similar"><a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4641183333/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4641183333.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="環境経済・政策学の基礎知識 (有斐閣ブックス)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000045768/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4000045768.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="環境経済学 (現代経済学入門)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4641177082/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4641177082.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="環境経済学をつかむ (テキストブックス「つかむ」)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000260227/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4000260227.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="環境政策論 (岩波テキストブックス)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492312870/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4492312870.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="環境経済学入門"/></a> </p><p class="gtools">by <a href="http://www.goodpic.com/mt/aws/index.html">G-Tools</a> , <abbr class="dtreviewed" title="2011/08/20">2011/08/20</abbr></p></div>
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『エネルギー論争の盲点』を読む
tag:Baldanders.info,2011-08-04:/blog/000532/
2011-08-04T09:00:00+00:00
2011-08-04T09:00:00+00:00
これからのエネルギー戦略について考えるにあたって,とっかかりになる資料として読んでみた。
Spiegel
/profile/
<p>
本題の前に。
今後のエネルギー政策についてビジョンが示されたようである。
</p><blockquote>
「分散型のエネルギーシステムの実現を目指す方向を明示する一方、国民の合意形成の重要性を指摘し、「『反原発』と『原発推進』の二項対立を乗り越えた国民的議論を展開する」としている。<br/>
また、短期(今後3年)、中期(2020年)、長期(2030年または2050年)の3段階に分けて戦略工程も示した。
今後3年間の短期的取り組みとして、電力システム改革のスタート、原子力事故・安全対策の徹底検証、原子力行政・規制などの見直しを行い、原発への依存度低減について国民的議論を深め対応を決定する、としている。<br/>
中期の取り組みとしては、原発への依存度低減も含めた新たなエネルギーベストミックスに基づく戦略実施を本格化するとしており、さらに新たなエネルギーベストミックスを実現し、新技術体系を踏まえた新たな電力システムを確立、定着することを2030年または2050年の目標に掲げた。」
(「<a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1108/1108011.html">2011年8月1日「原発依存度低減目指し戦略工程」 / SciencePortal</a>」より)
</blockquote><p>
とあり,字面だけなら無難なまとめをしているようだ。
まぁ問題はこれからなのだが。
あと東大の児玉龍彦教授の国会発言については一読することをお薦めする(Twitter 等で大反響のようなので関心のある人は既に読んでいるだろうけど)。
</p><ul>
<li><a href="http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8f7f0d5f9d925ebfe7c57aa544efd862">放射線の健康への影響について(児玉龍彦教授国会発言)</a></li>
</ul><p>
前半部分は???だが(これは私が判断できる情報を持ってないため),後半の提案については全面的に同意する。
すなわち
</p><ol>
<li>国策として、食品、土壌、水を、測定していく。</li>
<li>緊急に子どもの被曝を減少させるために、新しい法律を制定してください。</li>
<li>国策として土壌汚染を除染する技術に、民間の力を結集して下さい。</li>
</ol><p>
である。
</p><p>
さて本題。
これからのエネルギー戦略について考えるにあたって,とっかかりになる資料はないかと思っていたのだが, Tumblr (だったかな)で見かけた『エネルギー論争の盲点』という本を読んでみることにした。
</p><p>
ただこの本,個人的にはあまり評価したくない。
いや,内容がダメというわけではない。
むしろ読んで欲しい部類の本なのだが,読むにあたっていくつか考慮すべき点がある。
それだけ気をつけて読めばいい本だと思う。
</p><p>
まず前半で長々とエネルギー史について語っているのだが,どうも歴史認識が浅はかな気がする(他に植物相・動物相の捉え方についてもう~んな感じ)。
というか,持論に引きつけるために少々強引なまとめ方をしている。
例えば,こんな記述である。
</p><blockquote>
「ちなみに,高温多湿の夏を持ち,英国等の欧州北部に比べて森林が育ちやすい日本でさえも,かつて製鉄業による地域的な森林枯渇,ないし森林破壊による大規模な自然災害の危機があったようである。<br/>
それはヤマタノオロチ伝説が残る出雲地方,斐伊川流域を中心とする中国山地である。
古代から中世にかけて,この地域は大陸・朝鮮半島から伝わった「たたら製鉄」技術による,刀剣や農機具の一大生産地であった。
たたら製鉄は莫大な量の薪を消費する。
このため中国山地の大規模森林破壊が生じ,大雨が降ればたちまち土壌流出と大洪水が生じた(この鉄錆を含む赤い濁流が,血を流して暴れる竜に見えたことからヤマタノオロチ伝説ができたというのが有力な説である)。」
(『エネルギー論争の盲点』 p.47 より)
</blockquote><p>
言っておくが,出雲風土記にはヤマタノオロチ伝説なるものは存在しないし,それに類する話もない。
ヤマタノオロチ伝説は草薙剣に正当性を与えるためのでっち上げであり(あるいは他地域の伝説とのリミックス?),もちろんヤマタノオロチが斐伊川の象徴などという説は嘘っぱちである。
たしかに,奥出雲を中心に大陸・朝鮮半島から渡来した鉄鋼集団がいて,その人達によるスサノオ神(およびその御子神)への信仰があったであろうとは言われている。
また斐伊川下流の宍道湖では昔から洪水が頻発していた(私が子供の頃まであった)。
しかしそのこととヤマタノオロチ伝説は関係ないし,まして赤い血とか噴飯物の話である。
これがせめて国引き神話(これは出雲風土記にのみあり記紀にはない)とかを持ち出せば「あぁ結構調べておられるんだな」くらいの感想は持っただろうが,私が知ってる範囲でもこの調子では,他の記述に関しても心もとない感じである。
(ついでに言うなら,中国山地について言及するなら,たたら製鉄よりむしろ石見銀山を例に挙げるべきだと思う)
</p><p>
もうひとつは後半で日本における天然ガスの不遇な扱いについて,恨み節を延々と読まされることである。
これはさすがに辟易した。
日本における天然ガスの不遇な扱いが事実だとしても,こんな書き方では読み手がウンザリする。
なんでこんな(マイナスのイメージしか与えない)書き方をするのか理解出来ない。
編集者の意向なのだろうか。
この本は200頁以上あるけど,上述の与太話や恨み節などを削除すれば,100~150頁くらいで収まるような気がする。
100頁じゃ紙の本としての体裁がとれないというのなら電子書籍でも良かった(いや,むしろそのほうが良かった。本文の数字部分について根拠となる資料を付録にすれば,なお良かった)。
ちゃんとした内容なら100頁の電子書籍で700円でも買うよ,私。
</p><p>
以上,この本の難点について挙げたが,他の部分についてはよく書かれてると思うので,そこはお薦めである。
さて,ずいぶん脱線してしまったが,いよいよ本の内容について紹介しよう。
</p><p>
学校の物理ではエネルギーの定義を「ある系が外部に対して行える仕事量」(p.24)などと習ったかもしれない。
エネルギーはどこにでもある。
私たちの身体内にもエネルギー(化学エネルギー)はあるし,周りの空気にもエネルギー(熱エネルギー,運動エネルギー)はある。
テーブルの上においてあるコップにだってエネルギー(位置エネルギー)はあるのだ。
でも,私達が「エネルギー問題」として取り上げる際の「エネルギー」はもう少し限定される。
つまり,私達が社会生活を営む上で有用かつ価値の高いエネルギーまたはエネルギー源を指している。
こうしたエネルギー(源)の条件としては以下に示すように9つあるそうだ。(p.21 より)
</p><ol>
<li>汎用性(どんな用途でも利用可能であるかどうか)</li>
<li>量的柔軟性(微細出力でも巨大出力でも自在に調整可能であるかどうか)</li>
<li>貯蔵性と運搬性(貯蔵と運搬に手間暇がかからないかどうか)</li>
<li>ユビキタス性(時間と場所を選ばず,常に利用可能であるかどうか)</li>
<li>エネルギー密度(面積・体積,ないし重量当たりのエネルギー量が高いかどうか)</li>
<li>出力密度(時間当りの出力エネルギー量が高いかどうか)</li>
<li>出力安定性(出力がふらつかず安定しているかどうか)</li>
<li>環境負荷(利用に伴う環境汚染や環境破壊の程度が小さいかどうか)</li>
<li>エネルギー供給安全保障(安定供給に関する政治的リスクが低いかどうか)</li>
</ol><p>
たとえば,石油は8,9以外の条件は良好である。
石炭は1,2,4,8に問題があり,天然ガスは1,3,4に難があるが8は化石燃料の中ではもっとも良い。
原子力は1-4,8に問題がある(8はCO2排出の問題はないが放射線のリスクが高い)。
太陽光および風力は8,9以外はダメダメである。
</p><p>
石炭・石油・天然ガスは「化石燃料」と呼ばれる。
太古の生物の生命活動によって蓄積された炭水化物で,人間のタイムスケールでは再生不能であるがエネルギー密度が高いのが利点だ。
産業革命以来,私たちはこの地球の過去の遺産である化石燃料を急速に食いつぶしているわけである。
(とはいえ化石燃料はあと数百年(低く見積もっても1~2世紀)はもつらしいが)
</p><p>
これに対して太陽光発電,風力発電,水力発電,バイオ燃料,あるいは伝統的な薪炭,水車,風車,牛馬などによって得られるエネルギーは「再生可能エネルギー」と呼ばれる。
人間のタイムスケールより短いサイクルで再生可能なのが利点だがエネルギー密度が低い。
(ちなみに太陽光や風力を「自然エネルギー」と呼ぶらしいが,その括りなら化石燃料も自然エネルギーであるw)
</p><p>
原子力は化石燃料と再生可能エネルギーの中間くらいの立ち位置だ。
燃料のウランは自然では再生できないが,使用済み燃料の再利用(プルサーマル)が効くため燃料自体の寿命が長い。
エネルギー密度も高い。(ただし,後述するエネルギー産出/投入比率では化石燃料に比べて不利)
</p><p>
電力は,それ自体はエネルギー源になり得ない。
電力は,他の熱源や動力源から製造・転換されたエネルギーを伝達するエネルギー媒体ととらえられる(二次エネルギー)。
実は全エネルギー消費の中で電力として消費している割合(電化率)は,日本では,25%程度なんだそうだ。
さらにその中で家庭での消費分は3割程度らしい(ちなみに全エネルギー消費のうち家庭での直接的な消費は1割程度)。
「省エネ」というと,家庭内でエアコンや照明を消したり,ちまちまと待機電源を削ったり,みたいな話を聞くが,エネルギー全体から見るとさして貢献していないことが分かるだろう。
挙句に熱中症になるとか全く馬鹿げている。
(もちろん家計のやりくりの一環としての「省エネ」は,その家庭にとっては,意味があると思うけど)
</p><p>
エネルギーを考える上でもう一つ重要なポイントは「エネルギー産出/投入比率」である。
これは産出されたエネルギー量と算出に必要なエネルギー量の比率である。
これはエネルギーのコストに直接関わってくる値である。
エネルギー産出/投入比率が最も高いのは化石燃料(特に石油と天然ガス)で最大で100倍にもなるらしい。
原子力は20倍程度。
原子力は環境負荷(特に放射線リスク)が高いため,それを抑えるためのコストがどうしても高くなるからだ。
また原子力の場合は電力量のみでの評価なので化石燃料との単純比較は難しいかもしれない。
ちなみに太陽光は10倍程度(かな?)だ。
風力はもう少しだけ大きい。
</p><p>
再生可能エネルギーとして太陽光発電が大注目されているが,これまで見てきたように太陽光発電には色々と難点がある。
</p><blockquote>
「再生可能エネルギーの発電能力に関しては、カタログ性能と実際の稼働率のギャップをよくよく頭に入れておかなければならない。
たとえば太陽光発電は、夜には全く発電できず、朝夕・曇天・雨天では出力が大幅に落ち、日本での年間平均稼働率は、カタログ性能上の発電能力の一一?一二%にしかならない。
テレビのCMなどで、大規模太陽光発電所の発電能力が、何千世帯などといってるのは、殆どの場合、夏至の日の南中時の快晴の場合の瞬間最大発電能力に過ぎない。<br/>
(中略)<br/>
かといって、不安定性、間欠性を解消しようとして、蓄電池などを介在させれば、ますますエネルギー産出/投入比率が悪化して、ただでさえ非常に高いコストが更に大幅に上昇する。
しかも、その蓄電池(たとえば、リチウム・イオン電池等)を製造するために、資源国でも製造国でも大量の化石燃料の投入が必要なのが実態である。」
(『エネルギー論争の盲点』 p.115-116 より)
</blockquote><blockquote>
「政策的に太陽光発電を世界で一番積極的に導入したドイツは日本の環境派の人達だけでなくメディアでも日本が見習うべきモデルだとしてしばしば喧伝されている。<br/>
しかし、ドイツの太陽光発電の発電量が、現在いったいどの程度のものかご存知だろうか? 何と、二〇〇九年でドイツの全発電量の一%,二〇一〇年の推定値でもわずか二%なのだ。
ドイツの全エネルギー消費量から見ると、たった〇.二~〇.四%に過ぎないのである。
大半の読者は、この数字に驚くであろう。<br/>
確かに,現在のドイツの発電量の一六%は再生可能エネルギーとなっているが、その二割は水力発電所が占めている。あとは、風力発電が四割、バイオマスが三割で、太陽光発電は一割未満だ。<br/>
(中略)<br/>
ここで決して忘れていけないのが、ドイツの全発電量の四二%は、エネルギー源の中で最も安価だが、発電量当たりのCO2発生量が最も多い石炭火力が占めているということだ。
日本では、石炭のシェアは二五%程度だ。
高コストの再生可能エネルギーを政策として強制的に導入させられたドイツの電力業界は、電力生産コストの上昇を抑えるために、最も安価だが環境負荷が一番高い石炭を大量に使用しているのである。<br/>
もう一つ見落とされがちなのは、ドイツは近隣国から電気を輸入できるということだ。
ドイツの産業は、再生可能エネルギーの大量導入によって国内の電力価格が大きく上昇すれば、自由化されているEUの電力市場を通じて、フランスなど近隣の安い電気をいくらでも輸入して代替えできるし、現にそうしてる。
周知のように、フランスの発電の大半は原子力でまかなわれておリ、今のところ今のところ原子力推進政策を大きく変える見込みはない。」
(『エネルギー論争の盲点』 p.127-128 より)
</blockquote><p>
欧州のエネルギー政策(特に電力)については色々耳にするが,欧州の場合,国同士で電力を融通できるところが日本とは決定的に違う。
ある国が「うちは原子力をやめます」と言っても,実際には隣国の原子力によって作られた電力を買っているのなら「うちは原子力をやめます」という宣言は政治的レトリックでしかない。
これは間接的には日本にも言えることで,日本がこのまま何の策も打たないまま節電モードを続ければ国内企業のいくつかは資源を国外に移転するだろうが,移転先が原子力や石炭火力を使っているのなら,結局は環境負荷の高いエネルギーへのシフトを促してるのと同じなのである。
</p><p>
そういえばドイツでは,せっかくグリーン・ニューディール的な政策を掲げたのに,太陽光パネルのシェアを中国に奪われて国内企業は敗退したらしい。
日本では某企業が太陽光発電の巨大プラントを造るとか息巻いていたようだが,そこで何が起こるかほとんど予想がつく。
</p><p>
というわけで,エネルギー問題は電力だけの問題ではないし日本国内に閉じた問題でもない。
原発の是非とかいった矮小な問題にこだわっている場合ではないのだ。
最後に『エネルギー論争の盲点』からの提言を紹介する。
</p><p>
まず原発の新規建設は無理としている。
まぁこれは妥当な推定だろう。
私も前に<a href="https://baldanders.info/blog/000522/">意見を書いた</a>が,あれから更に状況は悪化している。
今の状況で新規建設の合意を得るのはとうてい無理だろうし,もはやそこにこだわる(リソースを投入する)べきではない。
ただし現時点で稼働中の原発については,『エネルギー論争の盲点』では改良を加えつつ継続させる,とある。
寿命がきた原発を建て替えるかどうかについては議論が分かれるところだろう。
『エネルギー論争の盲点』ではアリとしているが,新規建設が難しい状況で建て替えが許容されるかどうかは難しいところだ。
</p><p>
次に「供給側の省エネ」を挙げている。
先に紹介したように日本のエネルギー消費の電化率は25%程だが,エネルギー投入側の電化率は45%もあるそうだ。
このギャップ分を「省エネ」するのである。
具体的には現在の石炭火力(現在全発電量の1/4)を天然ガス(コンバインドサイクル式)に置き換えること,そしてコジェネレーション(cogeneration; 電熱併給)による分散化である。
</p><blockquote>
「エネルギーの損失を最小限に抑えるには、中央集権型のエネルギー供給にだけに頼るのではなく、供給元と受容先の距離が短い「分散型」の発電システムを、それぞれの規模に見合った方式で配備するのが望ましい。
すなわち、工場やオフィスビル等の中規模需要先にはガス・エンジン利用の、家庭等の小規模需要先には燃料電池利用のコジェネを取り入れ、発電の際に出る排熱を、温水・冷水をつくったり、冷暖房をするための熱として利用するのである。」
(『エネルギー論争の盲点』 p.180-181 より)
</blockquote><p>
東京の六本木ヒルズは施設内で消費する電力と熱の全てをコジェネレーション(ガスタービン式)の自家発電(約4万kW)でまかなっているそうだ。
先の震災の時でも機能していたし,逆に電力の一部を東電に売ってたらしい。
太陽光発電などの再生可能エネルギーとコジェネレーション機器を組み合わせる手もある。
これなら再生可能エネルギーの出力安定性の問題をある程度カバーできる。
</p><p>
(話が脱線するけど,クラウドの喩えとして「情報の発電所」とか言われてたような気がするが,本物の発電所が分散化に向かうとすると,この喩えは使えなくなるねえw)
</p><p>
現時点ではエネルギー(源)に関してベストな選択はない。
したがって各エネルギー(源)の特性をふまえて,コストや環境負荷が最低となる組み合わせを模索していくしかないのだ。
また,エネルギーのネットワーク化も必要であろう。
そのためには発電と伝送(系統運用)の分離化とその先にある電力自由化が必要条件になる。
そう考えると,最初に紹介した<a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1108/1108011.html">エネルギー・環境会議による「『革新的エネルギー・環境戦略』策定に向けた中間的な整理」</a>は,まずは無難にまとまっているように見えるが,今後どうなるか要注意である。
願わくば,本当に数十年先を見据えたものになりますように。
</p>
<div class="hreview"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140883561/baldandersinf-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51pvRnytnTL._SL160_.jpg" alt="photo" class="photo"/></a><dl><dt class="fn"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140883561/baldandersinf-22/">エネルギー論争の盲点―天然ガスと分散化が日本を救う (NHK出版新書 356)</a></dt><dd>石井 彰 </dd><dd>NHK出版 2011-07-07</dd><dd>評価<abbr class="rating" title="3"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/G/01/detail/stars-3-0.gif" alt=""/></abbr> </dd></dl><p class="similar"><a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022734035/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4022734035.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="3・11後 日本経済はこうなる! (朝日新書)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862761127/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4862761127.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="パワー・ハングリー――現実を直視してエネルギー問題を考える"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4840139032/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4840139032.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="2100年、人口3分の1の日本 (メディアファクトリー新書)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/482224864X/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/482224864X.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="フレーミング 「自分の経済学」で幸福を切りとる"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4274068080/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4274068080.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="自然エネルギーの可能性と限界 ―風力・太陽光発電の実力と現実解―"/></a> </p><p class="gtools">by <a href="http://www.goodpic.com/mt/aws/index.html">G-Tools</a> , <abbr class="dtreviewed" title="2011/08/04">2011/08/04</abbr></p></div>
原発問題関連リンク
tag:Baldanders.info,2011-07-06:/blog/000525/
2011-07-06T09:00:00+00:00
2011-07-06T09:00:00+00:00
今回は原発問題に関する記事をいくつか紹介する。
Spiegel
/profile/
<p>
山口県の上関原発の建設を「一時凍結」するよう県議会に意見書を提出・決議するらしい。
各会派の思惑が交差して「一時凍結」という事になったらしいが,状況から考えて凍結を解除するタイミングがなさそうに見える。
仮に米国みたいにン十年後に再開しようとしても,原発のベネフィットが今と同じように評価されるかどうかは怪しいものである。
原発の建設・稼働については自治体によって態度がまちまちのようだが,上関のケースは他の地方へも影響するかもしれない。
</p><p>
<a href="https://baldanders.info/blog/000522/">前回</a>は私自身の意見を中心に述べたので,今回は原発問題に関する記事をいくつか紹介する。
つっても <a href="http://scienceportal.jp/">SciencePortal</a> の記事だけど。
</p><ul>
<li><a href="http://scienceportal.jp/news/review/1106/1106291.html">2011月6月29日「提言には判断できるデータも」 / SciencePortal</a></li>
<li><a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1107/1107041.html">2011年7月4日「原発すべて停止の経済影響で相反する試算」 / SciencePortal</a></li>
<li><a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1107/1107061.html">2011年7月6日「長谷川・経済同友会代表幹事『縮原発』提唱」 / SciencePortal</a></li>
</ul><p>
現時点で原発問題について一番冷静に報じているのは <a href="http://scienceportal.jp/">SciencePortal</a> だと思う。
ただし記事が1日程度遅れる傾向にあるので速報性には欠けるけど。
震災直後と違って,今は速報性はそれほど重視されないと思うので,記事を見てじっくり考えていけばいいと思う。
例えば<a href="http://scienceportal.jp/news/review/1106/1106291.html">「提言には判断できるデータも」</a>では,日本学術会議東日本大震災対策委員会「エネルギー政策の選択肢分科会」の提言として以下の6つの選択肢を挙げている。
</p><ol style="list-style-type:upper-alpha;">
<li>速やかに原子力発電を停止し、当面は火力で代替しつつ、順次再生可能エネルギーによる発電に移行する。</li>
<li>5年程度かけて、電力の30%を再生可能エネルギーおよび省エネルギーで賄い、原子力発電を代替する。この間、原子力発電のより高い安全性を追求する。</li>
<li>20年程度かけて、電力の30%を再生可能エネルギーで賄い、原子力発電を代替する。この間、原子力発電のより高い安全性を追求する。</li>
<li>今後30年の間に寿命に達した原子炉より順次停止する。その間に電力の30%を再生可能エネルギーで賄い、原子力による電力を代替する。この間、原子力発電のより高い安全性を追求する。</li>
<li>より高い安全性を追求しつつ、寿命に達した原子炉は設備更新し、現状の原子力による発電の規模を維持し、同時に再生可能エネルギーの導入拡大を図る。</li>
<li>より高い安全性を追求しつつ、原子力発電を将来における中心的な低炭素エネルギーに位置付ける。</li>
</ol><p>
変数部分の細かい調整はあるにせよ,巷の意見も大体この6つのうちのどれかに当てはまるだろう(電気がなくても我慢すればいいなんてのは論外)。
でも多くの人はこれらの選択肢のうちどれが妥当であるか評価するためのデータを持っていない。
「科学新聞」なんて学者以外で読む人なんていないだろう。
だから,政府や専門家・専門機関はどんどんデータを公表していくべきだ。
データを公表していけば根拠のない主張は除外できるし,幾つかある選択肢について(直感などではなく)合理的に評価ができる。
直感などカルトにやらせておけばよい。
今はネットの時代だし,それこそ Wikinomics 的な展開だってあり得るのだ。
</p><p>
というわけで,今後も興味深い記事については随時紹介していく。
ブックマークでは今後 <a href="http://www.delicious.com/spiegel/nuclear">spiegel/nuclear</a> でフォローしていく予定。
また Twitter では <a href="http://twitter.com/spiegel_bookmrk">@spiegel_bookmrk</a> でブックマークを垂れ流してるので(各ジャンルごちゃ混ぜでゴメン)興味のある方はそちらでもどうぞ。
</p>
<div class="hreview"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/482224587X/baldandersinf-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51MO5zFuNzL._SL160_.jpg" alt="photo" class="photo"/></a><dl><dt class="fn"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/482224587X/baldandersinf-22/">ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ</a></dt><dd>ドン・タプスコット/アンソニー・D・ウィリアムズ 井口 耕二 </dd><dd>日経BP社 2007-06-07</dd><dd>評価<abbr class="rating" title="4"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/G/01/detail/stars-4-0.gif" alt=""/></abbr> </dd></dl><p class="similar"><a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4153200018/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4153200018.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="クラウドソーシング―みんなのパワーが世界を動かす (ハヤカワ新書juice)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4042977014/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4042977014.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/486276035X/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/486276035X.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="クラウドソーシング 世界の隠れた才能をあなたのビジネスに活かす方法"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163724001/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4163724001.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="ツイッターノミクス TwitterNomics"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062134527/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4062134527.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="富の未来 上巻"/></a> </p><p class="gtools">by <a href="http://www.goodpic.com/mt/aws/index.html">G-Tools</a> , <abbr class="dtreviewed" title="2011/07/06">2011/07/06</abbr></p></div>
私も「原子力発電所のことについて...」
tag:Baldanders.info,2011-06-29:/blog/000522/
2011-06-29T09:00:00+00:00
2011-06-29T09:00:00+00:00
知り合いが「原子力発電所のことについてちょっと書いておくか」という記事を書いていたので,私も便乗して書いてみる。
Spiegel
/profile/
<p>
知り合いが「<a href="http://blog.netandfield.com/shar/2011/06/post-1020.html">原子力発電所のことについてちょっと書いておくか</a>」という記事を書いていたので,私も便乗して書いてみる。
前回「<a href="https://baldanders.info/blog/000519/">「揺れる原子力の将来」を読む</a>」という記事を書いたが,そちらと併せてどうぞ。
</p><p>
<a href="https://baldanders.info/blog/000519/">前回</a>は「日経サイエンス」の記事を紹介するという趣旨だったので私自身の考えは最小限にしていたが,今回は私自身がどう思ってるかを前面に出してみる。
とはいえ,私はその筋の専門家ではないし知っていることもそれほど多くないので,妥当な内容であるか非常に怪しい。
その辺を割り引いて生暖かい気持ちで読んでいただければ幸いである。
</p><p>
そういえば,私の実家は島根県松江市(県庁所在地)にあり,近くには中国電力の島根原発がある。
福島第一原発の事故の後,親と以下のようなやり取りをしていた。
</p><blockquote>
<table>
<tbody><tr><th style="vertical-align:top;white-space:nowrap;">私:</th><td>島根原発が今回みたいな事故起こしたら松江も避難範囲に入るよねぇ</td></tr>
<tr><th style="vertical-align:top;white-space:nowrap;">親:</th><td>そう。多分みんな雲南くらいまで避難しないといけないだろうねぇ</td></tr>
<tr><th style="vertical-align:top;white-space:nowrap;">私:</th><td>そうなったらうちはどうするの?</td></tr>
<tr><th style="vertical-align:top;white-space:nowrap;">親:</th><td>そうなったら広島に引っ越すから,よろしくね</td></tr>
<tr><th style="vertical-align:top;white-space:nowrap;">私:</th><td>(...やれやれ)</td></tr>
</tbody></table>
</blockquote><p>
まぁなんちうか,昭和の人はたくましいw
</p><p>
<a href="https://baldanders.info/blog/000519/">前回の記事</a>で福島第一原発の事故がどのようなものか紹介したが,これを一言でまとめるなら「福島第一原発(または広く日本の原発)はリスクに対して半分しか対応していない」点が問題だったと言える。
つまり「事故を起こさない」あるいは「自然災害を被らない」よう設計されていはいるが「災害を被ったとき」「事故が起きたとき」に対する備えがまるでできていないのだ。
両方できてはじめてリスクに備えていると言えるのであり,両者のバランスを如何にとるかがリスク管理である。
何度も言うが,優れたシステムとは,失敗しないシステムではなく,上手に失敗するシステムである。
</p><p>
であるなら,今回の事故は天災というより人災に近いものであって,それゆえに対処は可能であると考える。
</p><p>
個人的な意見を言わせてもらうなら,私は原発は「あり」だと思う。
現在のものを無理に縮小する必要はないし,必要であれば新規に建設するのもありだと思う。
ただし,それにはいろいろと条件がある。
</p><p>
まず,今回の事故について徹底した調査を行い「未然防止」の対策を行うこと。
「再発防止」などあたりまえ,大事なのは「未然防止」である。
これは原発そのものもそうだが,原発を取り巻く行政についても同様である。
自民党時代にも言われたことだが,とにかく日本は危機管理が弱い。
まぁ政権政党として未熟な民主党がうまくやれないのはある程度折り込み済みだったが,今回の事故を教訓にしっかりした体制を作って欲しいものである(←ちょっと投げやりな言い草)。
</p><p>
次に,原発周辺の住民や自治体と徹底したリスク・コミュニケーションを行い,合意を得ること。
どうも政府や電力会社はリスク・コミュニケーションを「説得」や「啓蒙」や「宣伝」のことだと勘違いしているんじゃないだろうか。
確かに「説得」や「啓蒙」はリスク・コミュニケーションの手段のひとつだが,それだけではダメで,リスクを受容する人たちとの間できちんと「合意」が形成されることが重要である。
ましてや「札束で頬を叩く」ような真似は断じて許されない。
この辺の構造は沖縄の米軍基地問題と相似形だと思う。
原発は莫大な利権である。
私たちはそういった利権に押し切られないような知恵と力をつける必要がある。
これは新しく建設する原発だけではなく,現代稼働中(点検中のものも含めて)の原発についても同様である。
</p><p>
しかし現実的には新しく原発を建設することはほとんど無理だろう。
福島県知事は脱原発の姿勢を示したそうだが,無理からぬ話である。
今まで安全性ばかりを強調し正しくリスクを示さなかったのだから,これはある意味,政府や電力会社側の自業自得と言える(大阪府知事のはパフォーマンスにしか見えないがw)。
アメリカでは,今でこそ原発の建設ラッシュだそうだが,これまで25年以上もの間,新しく原発が建設されることはなかったらしい。
それだけ原発は難しいのである。
</p><p>
(ところで,アメリカの原発は当然テロにも耐えられるよう(少なくともこれから建設されるものについては)設計されているが,日本ではそういう話はあまり聞かない気がする。
今回の事故で分かったのは,外部電源を切断してしまえば,原発が稼働中だろうがそうでなかろうが,簡単に危機的状況に陥るということだ。
こんな安直なターゲットはないよねぇ)
</p><p>
更に言うと,現在の電力会社は「発電」と「送電」に分社化すべきである。
これは菅政権で提唱され野党自民党が反対姿勢を示しているが,是非やっていただきたい。
しかし,もちろんこの分社化にもリスクはある。
</p><p>
2000年から翌年にかけての「<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%A2%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E5%8D%B1%E6%A9%9F">カリフォルニア電力危機</a>」を覚えている方は多いかもしれない。
これは「電力自由化」の弊害として有名であるが,電力会社を分社化し更にその先の「電力自由化」を見据えるならば,当然起こり得るリスクである。
ただ,電力の過剰供給を抑えるとか,新しい(いわゆる「再生可能エネルギー」の)発電会社の参入を促すとか,リスクを上回るベネフィットはあると思う。
(ただし菅政権がそこまで考えて電力会社の分社化を考えているかは怪しいが。
もしこの考えを推し進めていくなら「エネルギー省」みたいなのが必要になるかもね)
</p><p>
原発の将来について考えることは,原発の是非だけを問うことではなく,もっと広くエネルギー政策について考えることである。
文明が進む限り電力需要は増大することは分かりきっている。
でもその代償として CO2 排出による地球温暖化や原発による放射線リスクなどの様々な環境問題を抱えている。
今まではそういったリスクを「外部化」することで見ないふりをしてきた。
しかしこれからはそういうわけにはいかない。
文明の歩みを止めずに,かつ持続可能な社会を構築していくにはどうすればいいか考えていかなければならない。
その上でやっぱり原発が必要だというのならやればいい,と私は思う。
</p><p>
最後に,放射線リスクについてちょっと書いておく。
原発事故でよく聞くのが「リスクでは分からない不確実なものがある」という物言いだ。
しかしリスクというのは不確実なものを科学的に扱うための武器である。
そして放射線被爆の問題は間違いなく「リスク」として取り扱うべき分野である。
</p><p>
というわけで,以下の記事を紹介する。
</p><ul>
<li><a href="http://togetter.com/li/153707">Togetter - 「低線量放射線被曝をめぐる混乱=医療と保健物理」</a></li>
</ul><p>
保健物理については全く疎いのでこの記事を鵜呑みにするしかないのだが,保健物理が「放射線というのは純粋なリスクであり何としても避けなければいけないもの」ならば,それはリスクではなくハザードである。
つまり医療と保健物理のアプローチの違いはリスクとハザードの違いであると言える。
もう一歩踏み込んで言えば「例の20mSv問題で涙の辞任をした」小佐古敏荘教授と「100mSv」の話で一部で叩かれている山下俊一教授の違いもそこにある。
</p><p>
日本医学放射線学会が6月2日に行った声明では以下のように述べられている。
</p><blockquote>
「放射線はそのイオン化作用でDNAに損傷を与えるので、放射線量の増加に伴い、がんなどの確率的影響が発生する危険性も増加する。
しかし100mSv以下の低線量での増加は、広島・長崎の原爆被爆者の長期の追跡調査を持ってしても、影響を確認できない程度である(ICRP Publ. 103, 105)。
原爆被爆では、線量を一度に受けたものであるが、今回は、線量を慢性的に受ける状況であり、リスクはさらに低くなる(ICRP Publ.82, 103)。
そのため今回の福島の事故で予測される線量率では、今後100万人規模の前向き研究を実施したとしても、疫学上影響を検出することは難しいと考えられている。
日本人のがん死が30%に及ぶ現代においては100mSv以下の低線量の影響は実証困難な小さな影響であるといえる。」
(via <a href="http://www.radiology.jp/modules/news/article.php?storyid=931">原子力災害に伴う放射線被ばくに関する基本的考え方</a>)
</blockquote><p>
放射線被曝の問題はハザードからリスクへステージが移ってるんだと思う。
それは広島長崎の原爆被害の調査の成果であり,チェルノブイリ事故の調査の成果でもある。
</p><p>
原爆被害にあった方々には原爆手帳が交付されているが,今回の原発事故で被曝(特に内部被曝)された方にも同様のものを交付して医療上の優遇措置をすべきではないかと考える。
その上で長期(30年くらい?)の追跡調査を行うべきだろう。
(まぁそれによって差別を受けるようだとまた拙いんだけど)
</p><p>
その他,参考までに:
</p><ul>
<li><a href="http://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/about/message/katamine/message97.html">福島県における放射線健康リスク管理活動について|長崎大学</a></li>
<li><a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1106/1106241.html">2011年6月24日「長崎大学学長が山下俊一教授擁護の声明」 / SciencePortal</a></li>
<li><a href="http://satoshi.blogs.com/life/2011/06/tepco.html">Life is beautiful: ホリエモンを有罪にしておきながら、この東電の粉飾決算を見逃すことは許されない</a></li>
<li><a href="http://scienceportal.jp/news/review/1106/1106291.html">2011月6月29日「提言には判断できるデータも」 SciencePortal</a> (6/29 追記)</li>
<li><a href="http://blog.netandfield.com/shar/2011/06/post-1022.html">原子力発電所って必要?ほんとに日本の技術って高いの?ってあたり</a> (6/30 追記: 「<a href="http://blog.netandfield.com/shar/2011/06/post-1020.html">原子力発電所のことについてちょっと書いておくか</a>」の続き)</li>
<li><a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1107/1107041.html">2011年7月4日「原発すべて停止の経済影響で相反する試算」 / SciencePortal</a> (7/4 追記)</li>
<li><a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1107/1107061.html">2011年7月6日「長谷川・経済同友会代表幹事『縮原発』提唱」 / SciencePortal</a> (7/6 追記)</li>
</ul>
<div class="hreview"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B004Y6D11G/baldandersinf-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/517omoj0fLL._SL160_.jpg" alt="photo" class="photo"/></a><dl><dt class="fn"><a class="item url" href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B004Y6D11G/baldandersinf-22/">日経サイエンス 2011年 07月号 [雑誌]</a></dt><dd>日本経済新聞出版社 2011-05-25</dd><dd>評価<abbr class="rating" title="4"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/G/01/detail/stars-4-0.gif" alt=""/></abbr> </dd></dl><p class="similar"><a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0050D2K0U/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/B0050D2K0U.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="Newton (ニュートン) 2011年 07月号 [雑誌]"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B004VMUJOU/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/B004VMUJOU.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="日経サイエンス 2011年 06月号 [雑誌]"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0054QVOS2/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/B0054QVOS2.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="日経サイエンス 2011年 08月号 [雑誌]"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B005575HQU/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/B005575HQU.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="Newton (ニュートン) 2011年 08月号 [雑誌]"/></a> <a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/402100906X/baldandersinf-22/" target="_top"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/402100906X.09._SCTHUMBZZZ_.jpg" alt="朝日新聞縮刷版 東日本大震災 特別紙面集成2011.3.11~4.12"/></a> </p><p class="gtools">by <a href="http://www.goodpic.com/mt/aws/index.html">G-Tools</a> , <abbr class="dtreviewed" title="2011/06/29">2011/06/29</abbr></p></div>
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「揺れる原子力の将来」を読む
tag:Baldanders.info,2011-06-15:/blog/000519/
2011-06-15T09:00:00+00:00
2011-06-15T09:00:00+00:00
ここに2冊の雑誌がある。『日経サイエンス』の2006年12月号と2011年7月号だ。
Spiegel
/profile/
<p>
ここに2冊の雑誌がある。
『日経サイエンス』の2006年12月号と2011年7月号だ。
2006年12月号の特集は「エネルギーの未来」で,その中に「原子力を生かす道」という記事がある。
SCIENTIFIC AMERICAN の “The Nuclear Option” という論文の翻訳だ。
一方,2011年7月号の特集は「揺れる原子力の将来」だ。
この特集の各記事は論文というよりは報告・提言の体裁をとっている。
</p><p>
あの巨大地震から3ヶ月が過ぎた。
政局は相変わらずグダグダだが,私たちまでそれに付き合う必要はない。
現地の皆さんは今も大変な状況だとは思うけど,それ以外の私たちはそろそろ今回の事態(地震・津波・原発事故)にちゃんと向きあって先に進まなければならない。
今回は上述の2つの雑誌を手がかりに原発について考えてみる。
読んでる方々の中には「今さら!」と思う方もいるでしょうが,私用の覚書ということでご寛容の程を。
</p><p>
まず,今回の地震の震源に近い原発は以下のとおり。
</p><ul>
<li>東北電力女川原発(3基)</li>
<li>東京電力福島第1原発(6基)</li>
<li>東京電力福島第2原発(4基)</li>
<li>日本原子力発電東海第2原発(1基)</li>
</ul><p>
今回の事故は「想定外」の津波が来たことが要因のひとつとされているが,各発電所における津波の想定波高と実際の波高は以下のとおり。
</p><div style="margin-left:1em;">
<table class="solid">
<tbody><tr><th>発電所</th><th>想定波高</th><th>実際の波高</th></tr>
<tr><td>女川原発</td><td>9m</td><td>13m</td></tr>
<tr><td>福島第1原発</td><td>6m</td><td>15m</td></tr>
<tr><td>福島第2原発</td><td>5m</td><td>7m</td></tr>
<tr><td>東海第2原発</td><td>5m弱</td><td>5m強</td></tr>
</tbody></table><br/>
※ 東海第2原発では想定波高を6mに上げて改修中だった
</div><p>
こうした状況の中で福島第1原発の4基だけが深刻な事故を引き起こしたことは(福島第2原発も実は結構ヤバかったけど)注目すべき点である。
比較的少ない被害で済んだ炉とそうでない炉との差は何か,を分析することは今後の役に立つことだろう。
</p><p>
ところで事故が大々的に報道される中,こういう疑問を抱かなかっただろうか。
</p><p>
「発電所が停止中にもかかわらず,状態を維持するのに電力が必要というのは発電所としては欠陥なのではないのか?」
</p><p>
実際には海水ポンプも電源も失われた状態であっても緊急用の冷却水槽(隔離時復水器)によって維持されるらしい。
しかしこの機構は長時間の電源喪失を「想定」したものではなかった(緊急用の冷却システムは8時間を目安に設計されているそうだが,福島第1原発の1号機の場合はもっと短時間に機能が失われたようだ)。
この問題については既に把握済みのようで,原子力安全・保安院が全国の原発に対して調査をおこなっている。
それによると,外部電源が失われた際に復旧に時間がかかる原子力発電所と再処理施設が6箇所あることが分かっている。
</p><blockquote>
「9日、原子力安全委員会に提出された報告書によると、これらの発電所・施設は日本原子力発電敦賀発電所2号機、四国電力伊方発電所1、2号機、東北電力東通原子力発電所、電源開発大間発電所、日本原燃六ヶ所再処理施設、日本原子力研究開発機構東海再処理施設。
一つの変電所からのみ電力を供給されているか大元が一つの変電所であるため、外部電源が失われた際に復旧に時間がかかるとされた。
このうち、敦賀発電所2号機と伊方発電所1、2号機については、二つ以上の変電所から受電する対策を講じる、とそれぞれの電力会社が報告している。
残りの4発電所・再処理施設については、送電切り替えにより電源喪失の早期復旧を可能とするという対策が示された。
原子力安全・保安院は、これら事業者から示された対策を、いずれも妥当な対応と評価している。」
(via <a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1106/1106101.html">外部電源復旧に時間かかる原発・再処理施設6カ所</a>)
</blockquote><p>
(これって本当に「妥当な対応」なのかね。
福島第1原発の外部電源が失われたのは地震で送電鉄塔が倒壊したからなのだが,そこまで見越した上で「妥当な対応」と言っているのだろうか。
ちなみに『日経サイエンス』 2011年7月号ではアメリカのAP1000型炉を紹介しているが,このタイプ(受動安全炉)では電力や人の操作を介さずとも3日は冷却機能が働くらしい)
</p><p>
優れたシステムというのは「失敗しないシステム」ではなく「上手に失敗するシステム」である。
原子力災害対策本部が IAEA 閣僚会議に提出した<a href="http://scienceportal.jp/news/daily/1106/1106082.html">調査報告書</a>でも「シビア・アクシンデント(過酷事故)」に対する備えが不十分であることを認めてる。
</p><p>
例えば,今回の事故ですっかりおなじみの言葉になった「ベント」だが,欧州の原発ではベントが必要になる場合を想定しベントで放出される気体から放射性物質を除去するフィルタ施設がある。
一方日本の原発では,ベントの機構自体はあるもののベントを行うことは「想定」されてなかった。
故に日本の原発のいずれにもベントに対するフィルタはない。
もしフィルタがあればもっと早くベントを決断でき,結果的に被害を軽減できたかもしれない。
</p><p>
過去に起きた問題を再び起こさないように対策することを「再発防止」という。
一方,システムに隠れている問題を抽出し対策することを「未然防止」という。
今回の事故は色々「想定外」だったかもしれないが,「想定外」に対応できなかったということは未然防止が出来ていない証拠である。
まっとうなエンジニアなら物事を「異常系」から考える。
例えば津波の想定波高が6mなら,6mより大きい津波が来た際にどう対処するか考えるのが正しい設計なのである。
(何故なら「想定波高6m」というのは6m以上の津波が「来ない」という意味ではなく,6m以上の津波が「来る確率が低い」ということに過ぎないから。
ここでリスク評価およびリスク管理が重要になってくる。
が,リスクの話は改めて)
</p><p>
さて,原発を使うことのベネフィットは何だろう。
『日経サイエンス』 2006年12月号の特集では原発をこう位置づけている。
</p><blockquote>
<ul>
<li>世界の電力消費量は2050年までに現在の2.6倍に拡大すると予測される。</li>
<li>数百カ所の原子力発電所を建設すれば,CO2の排出を大幅に増やさずに,こうした需要に応えられる。</li>
<li>それには経済性の高い新型の原子炉や,放射性廃棄物の貯蔵計画,核拡散の防止策が必要になる。</li>
</ul>
</blockquote><p>
まぁ最後のは原発に対する要求だけど,要するに増大する電力需要とCO2排出抑制を同時に達成するには原発が必要である,という位置づけである。
もし巷で騒がれているように日本が脱原発を目指すなら,それに代わるものを当てはめなければならない。
(例えばそれが「再生可能エネルギー」だとして,単に発電技術だけではだめだ。
原発に取って代わるには大きな電力を安定的に供給できる手段が必要になる。
そのためには蓄電技術とか(電力を効率的に供給するための)スマートグリッドのような技術などを併せて考えていく必要がある)
</p><p>
人によっては「節電すればいいぢゃん」と言う人もいるかもしれない。
しかし節電は(短期的にはともかく,長期的には)問題の解決にならない。
例えば現在,東北・首都圏のみならず関西でも「節電モード」に入ろうとしている。
電力を大量に消費する企業は仕方が無いのでリソースを海外に移転せざるを得ない(情報システム部門は国内のデータセンターを諦めて海外のクラウドサービスに切り替えるかもしれない。それはそれで興味深いが)。
でも移転した海外で使用する電力が原発によるものであるなら,結局のところ原発のリスクを海外に転嫁してるだけということになる。
(そして毎度のことながら,リスクをとったほうが最終的に勝者になり,敗者は「私たちは剥奪されている」と恨み言を言うわけだ)
</p><p>
20世紀の私たちは環境リスクを「外部」に押し付けることで安心と快適を得てきた。
でも21世紀の私たちにそれは許されない。
環境リスクを引き受けた上で他の多様なリスクとともにリスクを最適化し,持続的な発展を目指さなければならない。
そして環境問題とエネルギー問題は今や表裏の関係にある。
</p><p>
個人的にこの場で「こうすべき」とか言うのは避けるが,その場しのぎの政局運営でつまらない政治判断だけはしないでいただきたいものである。
</p>
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