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さよなら「電子書籍」 2nd

さて皆様,連休いかがお過ごしでしょうか。 私は本の片付け三昧で(積ん読だった本の)読書三昧です。 うちの弟は休みを今週の後半に寄せてこれから本格的に休みをとるみたいです。 そゆのもいいなぁ。

ところで気になる記事が

まじすか!

とりあえず元になった記事を見ると,確かに

「昨日、楽天koboが「Kobo Desktopで、電子書籍を読めるようになった。」と発表したので、仮に外付けHDDなどにデータを保存しておけば、購入した書籍は、半永久的に読めるのだろうかと思って、問い合わせしてみた。 楽天koboからの回答としては、外付けHDDなどへのデータの保存は不可能なうえに、5年後は、オンラインで同期してしまうと、電子書籍データは消えてしまうとのことだった。 (ライブラリから削除されて、消えるということらしい。)」
(「楽天koboの電子書籍再ダウンロード期限の罠」(2014-01-25)より)

と書かれている。 これ著者とかも承知しているのだろうか。

で, Google 先生に「電子書籍+ダウンロード制限」で訊いてみたら色々あるみたいやね。 かいつまんで紹介しよう。

「紀伊國屋書店が運営している電子書籍サービス「Kinoppy」をご存じでしょうか。 マルチデバイス対応(PC・Android・iOS・Sony Reader)で一度購入した書籍はどの端末からも読むことができ(一部例外あり)、かつ、電子書籍の取り扱いも結構幅広くいま日本国内で展開している最強と言っていいサービスです。
(中略) つまりKinoppyは優れた「クラウド型電子書籍サービス」であるにもかかわらず(実際UI上は書籍データの実体が端末にあるかサーバにあるかすぐにはわからない構成になっていて、ほぼ意識せず使えるようになっています)サーバからの再ダウンロードに期間制限がある…つまり「見た目は変わりないのにいきなり本が読めなくなってしまうかもしれない」というわけ!?それはいくらなんでもおかしくないか!?
(中略) その後もTwitter上で、Kinoppyの開発チームの方(※非公式アカウントです)とやりとりさせていただいた結果わかったことは
Kinoppyでの「再ダウンロード期限」とは、ストアの「再ダウンロード」ボタンが表示される期限であって、書棚からダウンロードするものは「同期」だから期限を過ぎても可能
ということでした。」
(「MobileHackerz再起動日記: 「DL1年制限」に惑わされるな!Kinoppyは現在最強のクラウド電子書籍だ」(2012-03-22)より)
「余談ですが、実は紀伊國屋書店BookWebPlusの再ダウンロード期限が撤廃されていくときに、最後まで1年間の再ダウンロード期限が残っていたのは講談社でした。 講談社は野間省伸さんが社長になってから、かなり電子書籍に対する方針が変わったようですね。
Reader Storeの状況を見ると、いまは集英社と小学館が抵抗勢力になっている様子が伺えます。 そして今回のBookLive!です。 恐らくBookLive!側としては、他の書籍には制限かけていないわけですから、制限が無い方向でやりたかったに違いありません。」
(「BookLive!で小学館コミックの配信が始まったけど「小学館マンガ作品の端末へのダウンロードは購入から5年間です」という笑えない制限が付いていた : 見て歩く者 by 鷹野凌」(2012-12)より)
「Yahoo!の電子書籍は、書籍データそのものをダウンロードするわけでは無く、閲覧キーのみの、期限付きのレンタルのようなもの。 ネットに繋がなければ読めないし、期限が来たらお終い。読みたければもう一度購入しなくてはいけません。
e-book japanは、パソコン等の媒体に書籍データをダウンロードしますので、ネットに繋がっていなくても読めます。 購入して1週間以内なら、何らかのトラブルから書籍を無くしてしまっても再ダウンロードが出来ますが、それを超えると、再度購入することになります(再ダウンロード方法までは、やったことがないので不明…)。 データはあるが開けなくなった、表示されなくなったなどのトラブルの場合は、e-book japanに連絡すると、無償で再ダウンロードなどの対処をしてくれます。」
(「電子書籍は音楽のダウンロードのように 一度購入したら回数制限無しでダウンロード... - Yahoo!知恵袋」(2013-06-07)より)

なんというか,なんだかなぁ...

知的財産権は英語では “Intellectual Property Right” と書きますが,これを直訳して「知的所有権」と呼ぶ人がいます。 (確かに権利者には大きな権限が与えられていますが)でも知的財産権は所有権ではありません。 ましてや著作物は「出版社」のものではありません,絶対に。

近代は「個人主義」と「大衆」という考え方が並行して台頭してきた不思議な時代です。 昔は,出版社が相手をしていたのは,読者個人個人でなく,「大衆としての消費者」でした(多分私達以上の世代は「消費は美徳」などと刷り込まれてきたはずですw)。 今は違います。 「大衆」も「消費者」もいなくなりつつあります(まぁ動員に弱い日本人はそうでもないかもしれませんが)。 代わりに台頭してきたのは「個人としての利用者」です。

著作権の「そもそも」は著者と出版社との間で交わされた(出版社から著者を守るための)ルールです。 その中に私たち「読者(あるいは視聴者)」は入っていません。 なぜなら私たちは「大衆としての消費者」に過ぎなかったからです。 出版社にとって私たちは「視聴率」や「売り上げ数」といった数字にすぎないのです。

ゼロ年代,音楽出版社は著作権(および隣接権)を盾に「大衆としての消費者」の「違法行為」を取り締まろうとしました。 結果は今の状況を見ればわかると思います。 なぜ音楽出版社は失敗したのか。 それは,今や「大衆としての消費者」など居ないからです。 そして書籍出版社も音楽出版社と同じ轍を踏もうとしています。 それを象徴するのが「『緊デジ』という名の利権」です。 「緊デジ」事業は被災地にも著者にも読者にも何ももたらしませんでした。 あの10億円は誰がガメてるんでしょうね。

「電子書籍」は実は紙の本よりもずっと controllable です。 そこに目をつけた出版社は知財の独占を目論んでいます。 たとえば DRM のような形で,あるいは読者の行動に期限を設けることで。 そして「出版権」などという新たな隣接権を議論の俎上に持ち込むなど。 でもこれは読者に唯一残された使用(つまり読んだり聴いたりすること)の侵害にほかなりません。 そういったことを見極めてダメなものには No! と言っていかなければなりません。

参考:

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〈海賊版〉の思想‐18世紀英国の永久コピーライト闘争
山田 奨治
みすず書房 2007-12-20
評価

REMIX ハイブリッド経済で栄える文化と商業のあり方 日本文化の模倣と創造―オリジナリティとは何か (角川選書)

by G-Tools , 2014/05/05

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〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学
ミケーレ・ボルドリン デイヴィッド・K・レヴァイン 山形浩生
エヌティティ出版 2010-10-22
評価

インビジブル・エッジ この世で一番おもしろい統計学――誰も「データ」でダマされなくなるかもしれない16講+α オープン&クローズ戦略 日本企業再興の条件 外資系金融のExcel作成術: 表の見せ方&財務モデルの組み方 TPP 知財戦争の始まり

by G-Tools , 2014/05/05